高分子化合物 の実験
単体で 知られているあらゆる有機化合物の分子量は、150前後のものが最も多く、500以上のものは非常に少なくなる。
一方、単量体分子(モノマー)の繰り返し配列による重合化合物(ポリマー)の分子量は、10000以上のものが多く、このような化合物を「高分子化合物」と呼ぶ。 (分子量が100万以上のものは 「超高分子」と呼ばれることがある。)
(大きさの目安) 低分子: 分子量: 16(メタン)〜1000、 一分子中の炭素数: 1〜100、 分子の長さ: 0.1〜10nm
高分子: 分子量: 1万〜100万、 一分子中の炭素数: 1000〜10万、 分子の長さ: 0.1〜10μm
cf. ウィルス: 10〜100nm、 最小の細菌: 幅1μm、長さ数μm
* 一般に、DNA、タンパク質、酵素のような、低分子の単純な繰り返しではなく、生体の情報機能を担う
精密な構造の高分子は、これと区別されている。
高分子の生成反応としては、付加重合、縮重合、‐AAA‐BBB‐ のように集団を作って重合する ブロック重合、それが立体的に重合する クラフト重合などがある。
歴史的には、1870年にセルロイド、1884年にレーヨン、1909年にベークライトが製造され、第一次大戦後から、急に、人造繊維、人造ゴム、絶縁材料などが発達した。 第二次大戦後は、アメリカを中心に 石油化学工業が飛躍的に発達し、さまざまな高分子化学製品が 世界中に普及するようになり、現代の人々の生活に必要欠くべからざるものとなっている。
1. PVAスライムの実験:
これは 強度が無く全く実用的ではないが、誰にでもできる安全な実験なので、よく小学校の実験で扱われるテーマである。 単量体のビニルアルコール(CH2=CHOH)は アセトアルデヒドに分解するので単体では存在せず、工業的にはポリ酢酸ビニル(「木工ボンド」の主成分)を加水分解させて、安定な高分子の ポリビニルアルコール(PVA、[CH2CH(OH)]n)の水溶液として製造されている。 アイロン等の熱をかけるだけでさらに重合して、脱水・固化するので、「洗濯のり」として販売されている。
四ほう酸ナトリウム(Na2B4O7・10H2O)は、PVAの長い分子の間を架橋し、水分子を含んだ網目状の柔らかい高分子にする。 PVAに対する水の量(=網目に入る水の量)、また ほう酸ナトリウムの量(=架橋の程度)によっても、硬さ柔らかさが決まってくる。 水性絵の具によって着色することができる。
● PVA(ダイソーの洗濯のり)を 20ml、15ml、12mlに対し、それぞれ 水
40ml、45ml、48ml を加え、よく混ぜる。 硼砂(四ほう酸ナトリウム・10水和物、Na2B4O5(OH)4・8H2O = Na2B4O7・10H2O)
1.2gを水20mlに溶かした飽和液を作り、その上澄みを スポイトで各1.5ml加え、割りばし等でよくかき混ぜる。(少量の水性絵の具で色を付ける)
水分量が多いほど、流動性が高く、トロトロの溶液となった。
● PVA(ダイソーの洗濯のり)を 原液のまま、50ml量り取り、硼砂の飽和溶液を 1mlずつ加えて強く攪拌し(棒の回りに固く付く)、それを3回繰り返す。
10分ほど静置してから、出して手でよく揉む。 丸めると、ゴムボールのように弾むが、置いておくと形が崩れる。
このような、液体のように流動する性質(粘性)と、ゴムのように元に戻ろうとする性質(弾性)を併せ持つ性質を、「粘弾性」と呼ぶ。
・ これにラップをかけて1週間くらい置いておくと、”ダマ”がたくさんあって 硬さも不均一だったのが、自然に拡散してほぼ全体が均一になっていた。(不思議な現象?) その後、黄色と緑のスライムを上下2段に重ねると、きわめてゆっくり混じっていく。 すなわち、ミクロでは濃度差の駆動力によってよく拡散して混ざり、濃度差がなくなったマクロではあまり混ざらない。


2. 熱硬化性樹脂:
ホルムアルデヒドが付加重合によって間に入ってメチロール基(‐CH2‐OH)を形成し、さらに縮合によって尿素分子やフェノール分子等と 交互に並ぶタイプの樹脂で、酸触媒、アルカリ触媒や、加熱によって 不可逆的に重合が進んでいく。
(1) 尿素樹脂(ユリア樹脂):
● 尿素(NH2・CO・NH2) 5g を取り、ホルマリン(ホルムアルデヒド HCHO 35% + メタノール7.5% の水溶液)
10ml によく攪拌して溶かす。(色付けに メチレンブルー2滴入れる)
プリン型の上にアルミホイルを被せたような容器(耐熱性が望ましい)に、この溶液を入れて、6M塩酸(触媒)を5滴加えて強攪拌すると、発熱して急激に重合して、白っぽい結晶質のユリア樹脂ができる。 (発熱のため、プラ容器では変形する。)(換気注意) その後、型から剥離して、水洗して乾燥する。
● ホルマリン10mlに 尿素 2.5gを溶かし、6M酢酸アンモニウム水溶液を1ml加えて、5分以上沸騰湯煎で加温する。 粘性が出てきたら型に入れ、5日ほど置くと、透明な樹脂ができる。

(2) フェノール樹脂(ベークライト):
フェノール樹脂は、世界で初めて植物以外の原料より人工的に合成されたプラスチックで、優れた耐熱性(耐熱温度150 - 180 ℃)や電気絶縁性、また強度と加工性の良さから、加熱用具の取っ手や 電気器具、コンセント、紙フェノール・プリント基板などに 幅広く用いられてきた。 これらの熱硬化性樹脂は、フェノールとホルムアルデヒドが付加重合して合成される。
酸触媒(フェノール過剰)では、ノボラックという熱可塑性の樹脂(n=3〜10の固体)ができる。硬化には触媒が必要。 アルカリ触媒(ホルムアルデヒド過剰)では メチロール基が複数付加し、レゾール樹脂(通常は液状)が得られ、メチロール基が自己反応性のため、加熱することによりそのまま網目状に硬化させることができる。(ベークライト)
● フェノール(C6H5OH)のびんを湯煎で40℃以上に温め溶融させておく。 フェノール10ml、 ホルマリン10ml を混ぜ、6N NaOHを 15滴加えて、湯煎で10分間 攪拌・加熱する。 溶液は薄い黄褐色を帯びてくる。(色素は入れていない。) これを、ステンレスのプリン型に入れ、濃塩酸1mlを加えて攪拌すると
激しく反応して 軽石状に固まる。 (発生ガス注意、換気注意)
● また、同じ組成で、100℃の湯煎で 蓋を緩めて2時間加熱を行ない、やや粘稠な薄い褐色のレゾール(重合度: n=2〜5)になったら冷却して、1mlのホルマリンを加え(ホルムアルデヒド過剰にする)、保存する。 これに熱をかけると、水蒸気が抜け、さらに重合・硬化反応が進み、最終的には赤褐色〜黒褐色の硬いプラスチック(不溶・不融)に変化する。
(長期保存によっても重合が進む。)
紙(ろ紙)を浸して、(剥離用の)テフロンシート(t=0.1mm)で上下を挟み、アイロンの最高温度(200℃程度)をかけるとくっついて固化し、赤褐色のベークライトの薄板になる。 積層すると ベークライト板になる。


(3) メラミン樹脂:
メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドを 一旦、アルカリ条件下で縮合させた メチロールメラミンを原料とし、これを加熱することで縮重合し、網目状に架橋して熱硬化性樹脂となる。
尿素樹脂よりも、引張強度や耐衝撃性が優れ、表面光沢もあることから、食器などの日用品やスポンジ、家具、化粧板、また
電気部品の基板やケースなど、幅広く用いられている。

3. 熱可塑性樹脂:
(1) セルロイド:
セルロイドは、熱可塑性プラスチックの原点ともいえる樹脂で、綿などの天然のセルロースを混酸に漬けてニトロ化し、可塑剤として樟脳(しょうのう、カンファー、C10H16O)を混ぜて、型に入れ、溶剤を乾かして板などの素材を作り、それを90℃〜130℃に温めて成形して作られた。(150℃以上で分解が始まる) 1870年〜1880年にかけて発明された熱可塑性プラスチックで、初めはビリヤードボールに象牙の代わりに用いられ、その後はコルセット、義足、万年筆の筒やおもちゃなどに用いられ、1880年代後半からは、本格的に
映画のフィルムや 写真フィルムに用いられて、大量生産されるようになった。
欠点は可燃性・強燃性で、映画館やデパートなどで火災事故が多発し、またフィルムの経年劣化も激しいことから、米国で法規制された1955年以降は、ポリ塩化ビニルや、アセテート、ポリエステルなどに取って代わられていった。 現在では、その質感の良さから 高級メガネフレームや装身具、万年筆の軸、ギターピックなどの生活小物の製造に、ごく少量用いられているのみである。
● ニトロセルロースの作製: 濃硫酸 H2SO4 と 濃硝酸 HNO3 とを、容量比で 3:1 に混合して、混酸を作る。 濃硝酸 33mlを 200mlトールビーカーに入れ、濃硫酸100mlを ビーカーを十分水冷しながら(発熱大)、攪拌しながら少しずつ加える。(硫酸、硝酸 取り扱い注意) 混酸では、強い求電子剤であるニトロニウムイオンが発生している。
HNO3 + 2 H2SO4 → NO2+(ニトロニウムイオン) + 2 HSO4− + H3O+
混酸を 2つの100mlビーカーにそれぞれ65mlほどに分け入れ、脱脂綿を約1.2g×2 を量り取り、小さくちぎってそれぞれのビーカーに入れ、テフロン棒で軽く攪拌して、(刺激性の蒸気が出るので)シャーレでフタをする。(換気注意) 約2時間〜1日間そのまま放置する。 (時間が短いと硝化残りが混じり、またこれ以上長くてもあまり変わらない。)
その後、ニトロ化が済んだ脱脂綿をピンセットで絞りながら取り出し、多量の流水にさらして
酸を抜く。 ある程度酸が抜けたら 2、3回手で絞り洗いをして、さらに流水ですすぐ。
できた硝化綿を手でよく絞り、大きなシャーレやバット等に広げて、2日間 風乾する。(加熱してはいけない。乾燥すると刺激や高温、火の粉に敏感になるので要注意。
一瞬で爆燃する。手品の応用。)(火気厳禁) * 硝化綿は火事の危険があるので、余った分はすべて燃やして廃棄する
● 可塑剤の混合と 乾燥: 一部の綿は綿火薬の実験に使うので取っておき、この残りの硝化綿(3.2g、硝化によって重量が増えている)を
器に入れ、樟脳 1.4g(セルロイド全体の重量の25〜35%)をアセトン20mlに溶かした溶液を入れて、テフロン棒でよく混ぜると、溶けて ドロドロの液体になる。
(色を付ける場合はこの段階で着色する。)
さらによく混合した後、シリコンゴムの平板状の型に流し入れ、2日程度乾燥させると、セルロイドの素材板ができる。(気泡を含む) これを0.1mmtのテフロンシートに挟んで110℃くらいの低温でアイロンをかけると、薄いセルロイド板ができる。 (高温では爆燃するので注意)
* 気泡が抜けなかったのは、アセトンでは気泡が抜ける前にすぐ乾くためで、アセトンにエタノール等を混ぜて粘度を下げておくべきだったと思われる。 乾燥には時間がかかる。(ただし、ニトロセルロースはエタノール単独には溶けない。) 実際の操業ではロール掛けして脱泡するらしい。


(2) ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS): (・・・・・ これらは、高温、高圧、触媒を使うので、簡単な実験テーマには向かない)
石油系の熱可塑性プラスチックの代表的なもので、石油化学工業でナフサから始まって、不飽和鎖式化合物を重合させ、大規模生産される、「5大汎用樹脂」のうちの4つである。 ポリエチレンは、軟質、硬質ポリエチレンで2種とする。他はポリ塩化ビニル。)
ポリエチレンは、基本的に メチレン基(‐CH2‐)の繰り返しで、所々 αオレフィン(5%以下)による分岐がある網目構造。エチレンの重合で作られる。 硬質、軟質がある。 容器や包装用フィルムなどに多用。
ポリプロピレンは、(‐CHCH3・CH2‐)の繰り返しで、強度が高く 耐薬品性がある。 文具、自動車部品、包装材、繊維、容器類、化学機器。 市販のものは、プロピレン鎖のメチル基がすべて同じ方向を向くものが主成分。
ポリスチレン(1935年〜)は、(‐CHC6H5・CH2‐)の繰り返しで、ポリプロピレンの(CH3‐)の代わりに(C6H5‐、フェニル基)が入っている。
透明性が高く、硬いものが多いが、ゴム質を混ぜたものもある。 射出成型ができるので、バケツやプラモデルなど。
発泡スチロールは、ブタンやペンタンなどの炭化水素で発砲させたビーズ状ポリスチレン樹脂を、100℃(ポリスチレンの融点90℃)で圧縮して成形する。 食品パックの器、製品の容器やスペーサー、建材の断熱材等(玉を吹き付ける)に多用される。
ABS樹脂は、アクリロニトリル(A)、ブタジエン(B)と、このスチレン(S)の共重合体で、硬く丈夫で、光沢のある製品が作られる。椅子、テーブルや薄肉物。耐薬品性は低い。
(3) ポリ塩化ビニル(PVC):
ポリ塩化ビニルは、(‐CHCl・CH2‐)の繰り返しで、クロロエチレン(塩化ビニル)の重合によって作られる。 塩素を含むのが特徴で、難燃性、耐候性、耐薬品性から、建材、塩ビパイプ、電線被覆、防虫網、ビニールレザー等。 結晶質の粉末の形で合成し、可塑剤と安定剤(耐候性)を加えて、型プレスや押し出し成型で製品を作る。 ソーダ工業の食塩水電解時の塩素ガスを使用するので、比較的安価にできる。 廃棄時に焼却するとき、不完全燃焼時に有害なダイオキシンを発生させる問題がある。

(4) エンジニアリング・プラスチック:
@ ポリエステル: (PETは 1953年〜、米デュポン、 日本では1958年〜
テトロン)
ポリエステルは、ジカルボン酸と ジオールが 脱水縮合して、エステル結合した一連の熱可塑性プラスチック。 特に、この一種である、テレフタル酸と エチレングリコールが縮合して作られる、PET(ポリエチレンテレフタラート)がある。 これはフィルム、磁気テープや 飲料容器の”ペットボトル”の材料。 PETを 綿と混紡すると、丈夫で 洗濯後に乾きやすい夏向きの繊維になり、資源ゴミ取集後のペットボトルはPETの塊に再生され、繊維産業用にフィリピン等に輸出されている。

A ポリカーボネイト(日本では1971年〜):
モノマー単位同士の結合にカーボネート基(‐O・C=O・O‐)を含むのでこの名がある。 アクリル樹脂と共に”有機ガラス”とも呼ばれ、透明(光学用にも使えるレベル)、かつ 高強度のため、航空機や自動車の部品、電子光学、電気、プラスチックねじ、防弾ガラス用等に用いられる。 ただし溶剤、アルカリ、紫外線に弱い。 ビスフェノールAとホスゲンから作られる。

B アクリル樹脂(1934〜):
アクリル酸エステル(CH2=CH・COOCH3)、または メタクリル酸エステル(CH2=C・CH3・COOCH3)が重合したもの(PMMA)。 エステル結合でない CH2=C・(X) のほうで、ラジカル重合をする。(製品で重合度10000〜15000程度) 透明度と屈折率(1.49)が高い。熱可塑性があるので複雑な形の光学材料に用いられている。260℃程度で成形。 優れた耐候性のため 屋外用途にも用いられる。
また、エステルのメチル基の代わりに Naが入ると、Na+が静電反発して 高い浸透圧、すなわち吸水性を発揮する。 強力な吸水ポリマーになる。
Cf. アクリル繊維は、ポリアクリロニトリルで、アクリル樹脂とは別物。

C ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、1945年〜 米デュポン、”テフロン”の商標):
熱媒体のフロンガスの開発中に発見された。 テトラフルオロエチレン(F2C=CF2、bp.−76.3℃)の重合によって、気相から直接生成する。 PTFEは、耐熱性、非粘着性、撥水・撥油性、耐薬品性に優れ、特に フッ化水素酸に侵されないことから、初期は原爆用の6フッ化ウランの製造装置に用いられた。 その後、半導体製造装置(エッチングにフッ化水素使う)、フライパンの焦げ付き防止コーティング剤、各種機械部品、シート、テープ、フッ化水素容器、化学工業用ライニング、Oリングなどの多岐にわたって用いられるようになった。 温度を上げると、350℃から分解を開始し、500℃以上で有毒なポリマーガスを発する。
フライパンの空焼き・過熱注意。
PTFEは加工性に難があるが、間に酸素が入った PFA(ペルフルオロ アルコキシアルカン)等が開発され、圧延、押出しなどの塑性加工(溶融成形)ができるようになった。 テトラフルオロエチレン自身は、クロロホルムとフッ化水素の反応+熱分解により作られる。

4. 合成繊維:
(1) 銅アンモニア・レーヨン:
レーヨン とは(絹のように光る)”光線の綿”の意味で、天然セルロースを一旦溶かしてから再生する繊維の総称。(1897年、ドイツ) (原料が天然なので、厳密には「半合成繊維」と呼ばれる。)
銅アンモニア・レーヨンは、強アルカリ性の銅アンミン錯イオン溶液 = シュバイツァー試薬に 綿などのセルロースを溶かして液状にし、硫酸中に押し出すと、再度 元のセルロースの構造に戻って繊維状となる。
銅を除く工程が難しく 多くのメーカーが撤退したが、今も服地の一部として、「ベンベルグ」という商標の繊維を日本の旭化成が唯一作り続けている。
● 硫酸銅(CuSO4・5H2O) 5g を 水25mlに溶かし、28%アンモニア水(NH3)(取り扱い注意) 13ml を加えると、水酸化銅が沈殿し さらに 銅アンミン錯イオンとなって再溶解する。
さらに水酸化ナトリウム(NaOH)の固体を 7〜10粒入れてよく溶かしておく。 これをフタのあるビンに入れ、脱脂綿 0.5gを少しずつ分けて入れ、フタをしてよく振り混ぜながらすべての綿を溶かす。 30分くらい振り混ぜ、ビンの内側側面を見て ”ダマ”の無いように 溶かす。(塊があると注射器が詰まる。 かなりのアンモニア過剰でないと綿は溶けないので注意)
セルロースが完全に溶け切った溶液の上澄み(余った水酸化銅が下に沈殿する)から、5mlの注射器に1mlほど吸い取り、約1Mの希硫酸中に射出すると、界面で元のセルロースに戻って 繊維状になる。 しばらく置くと、銅などが拡散して、無色の繊維となる。 水洗して乾燥させる。
Cu(OH)2 + 4 NH3 → [Cu(NH3)4](OH)2
2 (C6H10O5)n + n [Cu(NH3)4](OH)2 → {(C6H9O5)2・[Cu(NH3)4]}n + 2n H2O
{(C6H9O5)2・[Cu(NH3)4]}n + 3n H2SO4 → 2 (C6H10O5)n (再生セルロース) + n CuSO4 + 2n (NH4)2SO4

(2) ビスコース・レーヨン:
(1)と同様にパルプなどのセルロースを元にして、ビスコース法によってレーヨン繊維や セロファンなどを作る技術。 ビスコース・レーヨン繊維(スフ)は絹のような光沢と柔らかさを実現し、現在でもよく製造されている。
● ろ紙を 6M水酸化ナトリウム溶液に漬け、一日置いて、アルカリセルロースとする。 このろ紙を新聞紙等で挟んで脱水し、ハサミで細かく切り、試験管に入れ二硫化炭素(CS2)を5ml入れて軽く栓をし、40〜50℃で2〜4時間ほど放置する。(換気注意) セルロース・キサントゲン酸ナトリウムの赤褐色になったら、2M水酸化ナトリウム溶液10mlを加え、時々攪拌しながら 一日かけて溶かす。
注射器の針を取って液を吸引し、針をつけて、2M硫酸90mlに 無水硫酸ナトリウム
Na2SO4 20g、 硫酸亜鉛 ZnSO4・7H2O 2g を溶かした液の中に、注入する。(粘いのでかなり力が要る) できた繊維を水洗・乾燥する。
Cell‐ONa + CS2 → Cell‐O‐CS‐SNa + H2O ・・・ アルカリセルロース + 二硫化炭素 → セルロース・キサントゲン酸ナトリウム + 水
2 Cell‐O‐CS‐SNa + H2SO4 → 2 Cell‐OH + CS2 + Na2SO4 ・・・ + 硫酸 → 再生セルロース + 二硫化炭素 + 硫酸ナトリウム

(3) ビニロン:
日本人による発明で、1950年にクラレが世界で初めて工業化に成功した。 引張強度が強く、伸びが無く、水や紫外線などに対する耐候性が高く、比重が水よりも重いので、漁網やロープ、農業用ネット、衣類の一部などに用いられている。
ポリビニルアルコール(PVA)を 硫酸ナトリウム溶液に射出して 塩析させ、繊維状にして、ホルムアルデヒドと硫酸を作用させて、アセタール化して作る。(実験室的には作りにくい)

(4) 6−6ナイロン:
6‐6ナイロンは、世界初の石油原料からの合成繊維で、1935年米国のデュポン社で開発され、アミド結合(-CO-NH-)により縮合した一連のプラスチックの一つとなっている。 ナイロン(nylon)は”伝線しないストッキング”から命名されたように、高い強度、軽量性、優れた耐摩耗性から、現在では 衣類から工業用部品まで幅広く用いられている。
ナイロンを2液界面で合成し、引き上げる実験は、よく高校レベルの実験で行われている。 アジピン酸そのものは、ヘキサメチレンジアミンと反応が進行しないので、アジポイルクロリド(アジピン酸ジクロリド)の形で用いる。
● ヘキサメチレンジアミン(H2N(CH2)6NH2、mp41℃) 3g (ビンを湯煎する)を、200mlトールビーカーに入れ、水60mlに溶かし、水酸化ナトリウム
3粒を加えて溶かしておく。 別途、アジポイルクロリド(アジピン酸ジクロリド、ClC=O・(CH2)4・C=OCl) 4ml(アンプルを開けるとき手を切らないように手袋着用)を ヘキサン60mlに溶かし、この溶液を、先の200mlトールビーカーの壁面に沿って静かに注ぎ入れる。
下: 水溶液、上: ヘキサン溶液 の界面に、6‐6ナイロンの膜ができるので、ピンセットでつまみ上げ、上部の試験管等の回転体に巻き付け 回転させて引き上げる。
ある程度たまったら、充分水洗し、手でよく絞ってから、さらにアセトンに漬けてよく洗い、自然乾燥させる。 (工業的には、これをペレットにして、押し出し成型で繊維や型物を作る。)

5. 市販の合成樹脂:
現在市販されている 工作用・家庭用・業務用の合成樹脂をいくつか実験してみた。
(1) エポキシ樹脂:
いつも電子工作等で、接着や充填用に使っている2液性エポキシ樹脂は、異種材料の接着性、耐水性、耐薬品性、電気絶縁性のため重宝していたが、実は熱硬化性樹脂の一種だった。 また、ガラス繊維や炭素繊維と組み合わせて複合材中のマトリックス樹脂にすることで高強度な構造材となり、プリント基板や、航空機や自動車の部品、スポーツ用品などに用いられている。
通常、主剤(A)と 硬化剤(B)に分けられ、使用直前に混合して用いる。
主剤は、エポキシ基(エポキシド)という 三員環エーテルが両端部にある化合物(プレポリマー)で、エポキシドは歪んで開環しやすく、硬化剤の求核性のあるアミンや酸無水物などと容易に付加反応する。(国産のチューブ入り接着剤の硬化剤は、ちょっとアミン系(トルイジン?)のにおいがする。)
エポキシドはオレフィン部分を酸化することで得られる。 最も代表的なプレポリマーは、ビスフェノールA と エピクロロヒドリンとの共重合で作られる。
● モールドする場合、接着剤としてくっつきやすいので、剥離の容易なシリコンゴム型などにモールドすると、剥離が楽である。 主剤(A)と 硬化剤(B)を目盛付きプラ・スポイトで
1:1の量になるように 10mlずつ分取。入れ終わった後さらに内側で何度も垂れてくるので、その都度押し出す。 プラ容器で混合し、色素を1滴入れ、型に流し込む。



(2) UV硬化型樹脂:
UV(紫外線)硬化型樹脂は、エポキシ系(エポキシ基、カチオン重合)と アクリル系(アクリル基、ラジカル重合)があり、どちらも紫外線の刺激をきっかけとして重合が進んでいく。
重合が比較的早く進むので、発熱も大きい。 どちらも モールド剤や表面コーティング剤のような、紫外光の届く範囲で用いられる。
UVのエネルギー(hν)によって光開始剤(PI)が、エポキシ系の場合、カチオン H+・X−(酸、X-が強い求核剤)に励起し、カチオン重合を進めていく。 アクリル系の場合は、ラジカル(I・)が発生し、ラジカル重合となる。
● エポキシ系のUV硬化樹脂(アリエクで購入)について、3Wの紫外線LED(λ=365nm)、15分、l=5cmで照射して、実際やってみた。 重合時は若干発熱する。
シリコンゴム型の深さ4mmまでは奥まで固まったが、5mmになるともう紫外線が減衰して届かないようで 奥が一部液体のままだった。 いくつかの波長の混じった高圧水銀ランプでやると、もう少し違う結果かもしれない。


(3) シリコン樹脂(ケイ素樹脂):
トリクロロシラン(R‐SiCl3)と ジクロロシラン(R2‐SiCl2)(R=CH3‐、C6H5‐など)を 適当な割合で混ぜ、トルエンを加え、加水分解して R‐Si(OH)3、 R2‐Si(OH)2 などのシラノールを 共縮合させて、シロキサン結合(‐O‐Si‐O‐)の架橋網状構造物をつくるもの。 重合度や有機基に応じて、油状のものから、ワニス状、グリース状、ゴム状のものまでいろいろある。 熱安定性(−80℃〜、〜260℃)、防水・撥水性、電気絶縁性、耐薬品性などがあるが、機械的強度は弱い。酸素をよく通すので、人工腎臓、コンタクトレンズにも用いられる。
一般に市販されている防水塗布・充填材のシリコンボンドは一液性で、空気中の水分に触れて架橋反応が進み、ペーストからゴム質へ重合する。 水分が行き届かない内部は、重合が遅くなる。
一方、2液性シリコンボンドは、主剤(A)と 硬化剤(B)を混ぜ合わせ、速やかに 内部まで硬化し、液も長期保存がきく。 ただし、主剤、硬化剤の配合比率を正確に守る必要がある。

● 2液性シリコン・モールドの実験:

(4) ポリウレタン(人肌のゲル):
ジイソシアネート(O=C=N−R−N=C=O)と、ジオール(HO−R’−OH)(エチレングリコールなど)から、ウレタン結合(−NH−(C=O)−)により重合。 ウレタン結合は加水分解されやすい。
評判の良くない”人肌のゲル”が販売されています。 混合比率がデリケートで、主剤(ジオール):硬化剤(イソシアネート)とを、正確に =3:1 にしてやらないと、固まらなくなる。 0.1g単位で秤量、誤差1%以内にしないと、べたつくので注意。 (デリケートかつ高価なので、実験はしていません)

§ DNAについて:
石油を湯水のように消費する時代は 終わりを迎えています。 最近のナフサ不足、・・・実は 流通が滞っているだけ・・・により、石油の有難みが分かるこの頃です。
金融や経済ではなく、エネルギーや資源の物流を支配する者が世界を支配する時代に変わりつつあります。
米国は、中国・BRICSなどに対し、ドル防衛のためいろいろな策を弄しています。
そのため、いつまでも終わらないイラン戦争、ロシア・ウクライナ戦争が続き、軍産複合体はボロ儲けをし、また、大動脈のホルムズ海峡が閉鎖され、世界中の国々は混乱し、ウクライナの長距離ドローン攻撃によってロシアの石油基地は叩かれ、アメリカの石油メジャーは各国に石油を売って儲けています。 イスラエル・ロビーとウォール街のWin‐Winの関係の成せるわざです。 就任の初めに”アメリカ第一主義”を謳ったトランプ大統領は、エプスタインによって、質の悪いグローバリズムに転落しました。
一方、日本は、用意周到な備蓄と 多様な供給ルートの構築を行ない、周辺諸国と比べ物にならないくらい平静を保っています。 また、技術立国として定められているので、かえってエネルギーさえも開拓する力があります。
またかつての時代と異なり、他国に真似のできない半導体、および半導体製造の周辺技術があります。これにより、以前、たとえば、石油調達ルートの多角化の外交を行なった田中角栄が、石油メジャーにより失脚させられたときのようなことは起こりません。それは、いざとなれば米国・シリコンバレーのサプライチェーンを止めるほどの、非常に強い外交カードを持っているからです。中国製の家電製品・エアコンなどにも、多くの日本製の半導体が使われています。
ただし、日本が米国や中国から後れを取っている分野については、AI・デジタル関連の米国企業(パランティア・テクノロジーズ)に、日本の機密情報、金融・経済が乗っ取られないように、またAIに依存し過ぎないように、この意味でも警戒する必要があります。 AIも所詮人が作っているものなので、開発者や国家の戦略が入り込んでいても不思議ではありません。 また、ハード面からは、半導体の劣化による誤動作も起こるので、定期的にメンテ(膨大なメモリ部品の交換: メモリが劣化する)をする必要が起こります。 動画・静止画などのアバウトな情報はほとんど問題が出ませんが、銀行預金や金融取引、国家機密などの高度な情報はきわめて危なくなります。
(* 中国のAIによる日本対中国のサッカーの試合予想では 中国が圧勝すると出ていましたが、結果は日本が1:0で勝ちました。
最近はAIも進化して、米国のAIによる 東大入試では、どの人よりも高得点をたたき出しました。こういう”知識もの”には強い。 また、非聖書的です。開発者が「反キリスト」側の人々だから?。)
さて、DNA や RNAも、分子量の大きさからは、定義上は高分子化合物ですが、合成樹脂などのいわゆる上記の高分子化合物とは全く異なるものです。 それは、上記のいわゆる高分子化合物は、低分子の単なる繰り返しや ランダムな配列に過ぎず、局所的な規則性の特徴があるだけで、配列のエントロピー(乱雑さ)が非常に大きいからです
一方、DNAは、4つの塩基を駆使して、生物体の全情報を形成し、その情報のもとに 精緻な生物体の発生などに展開され、転写され、生物体の構築に用いられていくのです。 配列のエントロピーは常に0です。 きわめて複雑な情報、しかし、1個の独立した情報となっています。 熱力学第二法則から、ランダムなもの(カオス)から、自然発生的に、秩序ある物が出来上がっていくことは決してありません。そうなる確率は計り知れないほど低いものとなります。・・・・ サムシング・グレートの存在、 DNA転写のメカニズム(1)。
DNAの直鎖の95%は 「イントロン」という いわゆる”がらくた(ジャンク)遺伝子”で、形質的な意味を持たず、しかも、どの親から遺伝されたものであるかを知ることもできる、情報遺伝子です。 残りの5%が、「エクソン」と呼ばれ、その生物の具体的な形質を形作り出す、情報遺伝子です。 どちらも精密に書き込まれた
情報遺伝子であることに変わりはありません。 ・・・・ DNA転写のメカニズム(2)
そして、これを作り出すことは 到底 人工的にはできません。 最新のPCR法を用いても到底無理です。 これは、文字通り神業(かみわざ)です。 せいぜい、大腸菌などの既存の生物を借りて、その中に、これまた既存のDNA断片を植え付けて、少しばかり付け加える、などの操作ができる程度です。
化学物質から一から組み立てるようなことは、絶対にできません。
また、20世紀に明らかになった不完全性定理(ランダム性)により、発生の過程を人間が知ることには限界があり、ある程度複雑さが増してくると、その先は 原理的に、本質的に、誰にも特定できなくなります。 まさに、「神のみぞ知る」状態です。 しかし、人々が寝ている間に、確かに種は芽を出し、植物は成長し、花が咲いて
実が成ります。 ・・・・ 遺伝子研究の技法について
DNAが この世に存在している ということ自体が、サムスィング・グレート、すなわち 「神」の存在証明です。
「天が地よりも高いように、わたしの道は、あなたがたの道よりも高く、わたしの思いは、あなたがたの思いよりも 高い。」 (イザヤ55:9)
「夜は寝て、朝は起き、そうこうしているうちに、種は芽を出して育ちます。どのようにしてか、人は知りません。」(マルコ 4:27)